私が証券会社に勤めていた30代のころの話です。
米国・スタンフォード大学名誉教授の
ウィリアム・シャープという先生との、
共同研究プロジェ口に参加していました。
合理的な資産運用の考え方が大きく遅れている日本が、
最先端を行く米国の第一人者の力を借りようというわけです。
このシャープ先生、
この分野では「超」が3つつくほどの有名人で、
私たちにとっては尊敬と敬意と驚異がごっちゃになった
まさに神様のような人です。
野球少年にとってのイチローやダルビッシュ、
サッカー少年少女にとっての本田圭佑や澤穂希、
お笑いを目指す人にとっての明石家さんま、ダウンタウン
なーんていうレベルです。
しかし、実際の先生は全く偉そうなところがなく、
私たちの話を真剣に聞いてくれ、
難しい理論をかみ砕いてていねいに説明してくれます。
食事に連れて行ってくれたり、
自家用のクルーザーに乗せてくれたり、
レストランで払うチップの額を自分では決められずに
奥様の指示を仰いだり・・・
プロジェクト・メンバー全員が
あっという間にシャープ先生のファンになりました。
そんな先生との研究プロジェクトも順調に進み、
1年後には目標としていた成果も出て、
会社からは ”Good Job!!“ てな感じだったころ、
大ニュースが飛び込んできました。
「ウィリアム・シャープ氏、ノーベル経済学賞受賞!!!!!」
なんだ、なんだ、えっ、えっ、えっ、
どっひゃーーーーーー!!です。
おーーー、
すっげー人と一緒に仕事してしまった・・・と、
打ち震えているばかりでは能が無いので、
新聞にお祝いの全面広告を出しました。
さてさて、ここからが本題ですが、
私たちはシャープ先生から本当にたくさんのことを学んだのですが、
あるとき先生はこのような言葉をくださいました。
「研究者として成長するために必要なことは、
できるだけ他流試合をすることです」
自分の考えを、自分の中だけに閉じ込めたり、
社内の影響力の及ぶ範囲内のみに伝えるのではなく、
できるだけ外に向かって広く発表し、意見を求めて議論する。
そのように、自分を厳しい風にさらされる状態に置くことで、
自分が磨かれるのです。
人によって何が「他流試合」かは違ってくるでしょうが、
限られた環境で自分の力を誇示して満足するのではなく、
もっと違った、もっと高いレベルの人と意見を交わしたり、
時には勝負することが大切である。
打ちのめされたり批判されたりすることへの恐れがあるので、
少しばかり勇気が必要ですが、
そのことで人は大きく成長するのです。
私にとって、忘れられないシャープ先生の言葉です。
さて、あなたは、
どのような他流試合をしていますか?
以下、自慢話です。
日本でシャープ先生の講演会を開催したときに、
何と、その前座を私が務めさせていただきました。
「ノーベル賞学者の講演の前座」
我が家で末代まで語り継がれるであろう名誉なことです。