賃金の二極化を前にした新入社員の生存本能

├高速で成長する技術

 

「一刻も早く力をつけたいんです!」

 

先日、たまたま話をした、
今年の新入社員Aさんの言葉です。

4月にある大企業に入社して8ヵ月になろうとしています。

 

「正直、この会社にずっといるとは思っていないんですよね。
世の中がそうなってきていますし。
だからこそ、一刻も早く力をつけたいんです!」

 

 

いまの若者は、
安定志向だとか受動的だとか言われていますが、
Aさんはちゃんと世の中の変化を理解した上で、
自分の意思を示しているのです。

 

まずは社会人としての常識をとか、
できるだけ早く職場に慣れてとかではなく
「一刻も早く力をつけたい!」と言い切るAさんに
思わず拍手をしてしまいました。

 

「早く力をつけるにはどうすればいいんでしょうか?」
と質問されたので、次のようにアドバイスしました。

 

仕事ができる人と仕事をする」

 

———————————————-
「できる」社員の仕事ぶりを真似する
———————————————-

 

私が新入社員として造船会社に入社した時、
直属の上司から次のようなことを言われたのを、
いまでもはっきりと覚えています。

 

早く成長するためには、
社内に「これぞ!」と思えるような先輩を見つけて、
半分はその人の真似をしなさい。
残りの半分は自分で考えなさい。

 

そこで、
「これぞ!」と思えるような先輩Bさんを見つけて
いろんなことを真似しました。

 

Bさんが上司に「結論から言いますと・・・・・・」
と報告しているのを聞き、
私も、「結論から言いますと・・・・・・」
とパクリました。

 

Bさんのレポートを見て、
書き方をすべて丸パクリしました

 

それ以外にも、日常の会話の仕方、
言葉づかい、略語の使い方など、
ずいぶんたくさんのことを真似しました。

 

なぜそれが良いのか後から分かってくるのですが、
この方法で一気にたくさんのことを学んだことは間違いなく、
Bさんにも上司にも本当に感謝しています。

 

人は、周りにどのような人がいるかといった
「人的環境」の影響を強く受けます。

 

できる社員がたくさんいる部署で仕事をしていると、
たとえ厳しく感じても徐々に仕事ができるようになっていきます。

 

スピード感のあるチームで仕事をしていると、
自分の仕事のスピード感も高まっていきます。

 

逆に、ダメダメ社員ばかりの部署で仕事をしていると、
次第にそれが常識に思えて、
自分もそのような人間になっていいきます。

 

スピード感に欠ける人たちと仕事をしていると、
それが当たり前となって、他のチームから見たら
自分も「遅い」と思われるような仕事のし方をしています。

 

もちろん、
本人の考え方次第という部分はありますが、
職場の人的環境の影響は極めて強いものがあります。

 

善し悪しは別として、
人は、日常的に触れているものに馴染んでしまうからです。

 

そういう意味で、
「これぞ!」と思う先輩を見つけるということは、
自分にとっての人的環境を整えるということだったのです。

 

自分の組織に、周りの組織に、社内のどこかに、
あるいは、お客様であったり、関係企業であったり、

とにかくどこかに、「これぞ!」と思う人を見つけて、
可能な限りその人と接する機会つくり、
そこからガンガン学ぶこと。

私がAさんに伝えたかったはこのことです。

 

 

——————————-
賃金の二極化が始まる
——————————-

 

近い将来、高齢化とともに
生産年齢人口の急激な減少、
すなわち大量の労働力不足が確実に起きる日本です。

 

その結果、
高い付加価値を提供することができる人の
市場価値がより一層高まり、
より高い対価が支払われるようになるでしょう。

 

しかし、良いことばかりではありません。

 

AIを含めたテクノロジーの進化による
ホワイトカラー層の仕事のIT化・自動化、
ブルーカーラー層の仕事のより一層の機械化、
外国人労働者の増加、
ネットを通じた国境を越えた業務発注の加速・・・・・・

 

一時的に、自国ファーストの風潮があるとはいえ、
世界経済の単一市場化の流れは止まらないと思います。

 

そのような状況下では、
付加価値の低い仕事しかできない人は、
AIと機械と世界中の安価な労働力とのコスト比較の
波に飲み込まれます。

 

 

「どんな仕事も尊い」
「すべての仕事に意味がある」

人が行うことを前提としたそのような考え方に
変わりはありませんが、それでもこの先、
賃金の極端な二極化は避けられないのではないでしょうか。

 

 

800万部超えの世界的なベストセラー
『サピエンス全史』の著者である
歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏も、
近著『ホモ・デウス』の中で、

 

将来、人々は、ごく一部のエリートと
AIによって無用になった「無用者階級」に分断され、
かつてない階層社会が到来すると予測しています。

 

この先、何十年も働いていこうという
Aさんの生存本能ともいうべき
「一刻も早く力をつけたい!」という言葉から、
私たちは何を学ぶべきでしょうか?

 

 

 

『ホモ・デウス』ユヴァル・ノア・ハラリ著
(河出書房新社)

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ著
(河出書房新社)

 

 

 

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