スティーブ・ジョブズ氏は前言撤回で有名な人でした。
たとえば、2008年に
ニューヨークタイムズ紙のインタビューに対して
「Kindleは失敗するだろうと」とコメントしています。
理由として、
「人々が、もはや字を読まないという現実が問題なのだ。
米国の40%の人間は1年に1冊かそれ以下の本しか読まない。
コンセプト自体が間違っている」
と、散々こき下ろしています。
しかし、いまや、iphone やipad で
多くの人が本を読んでいるのはご承知の通りです。
私たちの仕事でも、リーダーが
前言撤回をするのには結構勇気が要ります。
自分の判断で物事が動き始めているときに、
「やっぱり、あれやめた」とか
「今更だが、やり方を変更する」とか言ってしまうと、
「一度決めたことじゃないですか」とか
「今ごろそんなこと言わないでください」など、
メンバーから反発されるからです。
でも、それを言い出せずにずるずると進んでいるときって、
メンバーも意外と雰囲気を察していることが多く、
「本当に大丈夫ですか?」と聞かれたりします。
そこで、「大丈夫だよ」と勢いで答えてしまうと、
ますます後には引けなくなります。
どうしようもなくなってから、
「実はまずいことになっているんだけど」と
打ち明けざるを得ないことにもなりかねません。
確かに、安易で気まぐれな前言撤回は
メンバーからの信頼を失いますが、
ときには「いまなら間に合う」という段階での
前言撤回が必要なときもあります。
ただし、そのときは
批判を受け入れる覚悟が必要であるため、
躊躇(ちゅうちょ)してしまいがちです。
そこで、普段から、自分なりの
「前言撤回の基準」を決めておくとよいでしょう。
たとえば、
① 目的が変わったとき
② 目的は変わらないが環境が大きく変わったとき
③ もっと良い方法が見つかったとき
④ 大事なことを見落としていたとき
⑤ 得られるはずの協力が得られなかったとき
これらは、人によって、
あるいは職場によって違ってきますが、
共通している大切なことは、普段から
そのような基準をメンバーと共有しておくことです。
自分の考え方を知っておいてもらうことによって、
自ら判断もしやすくなり、メンバーの納得性も高まります。
間違いは誰でも起こします。
大事なことは、リーダーが
それをどれだけ迅速に軌道修正することができるかです。
ジョブズ氏の頭の中がどうなっていたかは
もちろんわかりませんが、
「人々が小さな画面で動画を見るかどうかは疑問だ」
と、かつては動画機能を否定していたのに・・・・
なんてことを知ると、それはそれで何だか爽快です。