私がかつて、ある組織横断的なプロジェクトに関わっていたときのことです。複数部門からの参加メンバーで協力してゴールを目指していたのですが、ひとつ困ったことがありました。
ある部門のメンバーAさんの動きが、何とも緩慢なのです。彼が仕事を進めてくれないと、私の仕事にも影響してきます。もう少しペースを上げてやってもらえないかと何度かお願いしたのですが、いつも生返事で、そもそも、やる気があるのか無いのか。
困った私は、上司のBさんに相談しました。
プロジェクトの進捗状況、Aさんの対応、それが私の仕事を、ひいてはプロジェクト全体を遅らせていること、何度言っても改善しないこと。心の中に溜まっていたことを、ここぞとばかりに訴えたのです。
話を黙って聞いていたBさんは、私が話し終えると、たったひと言こう言いました。
「で?」
私が???状態で固まっていると、もう一回
「で?」
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自分で考えることを促す「で?」
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そして、ゆっくりと「俺にどうしてほしいの?」
問題は分かったが、どのように解決していきたいのか、まず、お前の考えを聞かせろよ、ということだったのです。
Bさんから言われた、「で?」のひと言で、何のアイデアも持たずに、子どものように不満だけを言っていた自分が恥ずかしくなりました。私はこの経験以降、上司に相談するときには、内容を整理した上で、自分自身に対してこう問いかけてみることにしました。
「で?」
問題に対して自分はどうしたいのか、上司にどうしてほしいのか―――これらを事前に自分に問うて、自分の考えを持った上で相談に行くのです。
「分かった」と二つ返事でサポートしてくれることもあれば、話し合いながら対応方法が変わっていくこともありました。しかし、このようなやりとりを通して、自分で考える力がずいぶん鍛えられたような気がします。
管理職になってからは、部下の相談に対しては話を聴いた上で、やはり、「で?」と問いかけていました。Bさんのように、「まず、自分で考えようよ」というメッセージを送ることが大切であり、それが部下の考える力を高めることになるのです。
自分に対しても「で?」、部下に対しても「で?」で問い続けていけば、チームの中に、自分で考える空気が高まっていきます。
ちなみに、私が人材開発の仕事をするようになってから、実に多くの管理職の方から、「自分で考えようとしない部下」を嘆く声を聞きます。そのようなときも、相手の方に、こう問いかけることにしています。
「で?」