「ところで、○○さんは何ができるのですか?」
もし、こう聞かれたとしたら、あなたは何と答えますか?
場面としては、社外の交流会で初対面の人と名刺交換をして、お互いの仕事について多少のやりとりをした後です。
いきなり失礼な、かどうかはさて置き、少し考えて、「私は○○ができます」と答えたとします。
さて、あなたの答えは次のどのレベルにあるでしょうか。
- 今勤めている会社の中で通用するもの
- 同業他社でも通用するもの
- 他業種でも通用するもの
- 起業しても通用するもの
「通用する」というのは、たとえば、2であれば、同業他社に今と同じかそれ以上の年収で転職できるかどうかです。4であれば、組織という後ろ盾がなくても、あなたにお金を払ってくれる人がいるかどうかです。
「○○さんは何ができるのですか?」という何気ない質問は、実は、「あなたが提供できる価値は何なのか? その市場価値はどうなのか?」、ということを突きつけるものなのです。
-----------
時間の提供ではなく価値の提供を
-----------
私たちは資本主義という仕組みの中で仕事をしています。資本家が資金を提供し、それで人やモノをそろえて生産活動を行い、その成果を資本家に還元するのです。そこでは、人は労働力を提供し、その対価として賃金が支払われます。
この生産活動は、企業というウツワを媒体としてなされていますが、これまでの日本は、このウツワの力が強力でした。安定収入という経済的な安心感を与えてくれるだけでなく、社会的信用までも与えてくれます。初対面の人と名刺交換したときには、無意識に相手の会社名と役職で品定めしたりもします。
さて、昨今です。
企業に勤めてさえいれば一生安心、といったウツワの神通力はもはや過去のものです。日本を代表するいくつもの企業が経営危機に瀕してきたことを、私たちは目の当たりにしてきました。
さらに、労働という「時間」の提供に対して賃金を得る人は、世界中の安価な労働力や自動化とコスト面で比較されることになります。
今、企業が真に求めているのは、「時間」を提供してくれる人ではなく、「価値」を提供してくれる人です。企業が求める価値と自分が提供できる価値がマッチングしたときに、両者に良好な関係が生まれます。
「○○さんは何ができるのですか?」という質問に対する答えが、先ほど示した1から4に行くに従って、個人としての選択肢が増えていきます。俗な表現ですが、売り手側の力が強くなっていくのです。
自分はどのような価値を、どの程度のレベルで提供できるのか?―――これを真剣に考えることが、今後の職業人生を考えるに当たって、ますます重要な命題となっていくでしょう。
さて、あなたは何ができるのですか?