一人のビジネスパーソンが備えている知識や専門スキルの
領域を表す言葉として、
「I型人材」や「T型人材」などがよく使われています。
「I型人材」は、縦方向の棒で専門性に深さを表します。
すなわち、細分化されてきた特定の仕事領域で、
卓越した深い専門知識と高度なスキルを持ったスペシャリストのことです。
昭和の時代は、独立分野ごとの専門家による
「技術の高度化」がビジネスを勝ち抜いていくための
大きな原動力となっていたため、
製造業を中心として「I型人材」に大きなニーズがありました。
平成に入ってからは、
時代の変化を先取りしてダイナミックにビジネスを展開するための
「イノベーション」がキーワードとして確立され、
異分野同士のアイデアや機能を融合させる
クロスファンクショナル(領域横断的)な発想が必要とされてきました。
そこで、特定分野の専門性を強みとしながらも(縦棒)、
同時に幅広い知識基盤を持つ「T型人材」が評価されてきました。
横棒が知識基盤の広がりを表します。
その後さらに、
「ITスキルに長けた金融の専門家」
「統計分析が得意な経理の専門家」などの、
幅広い知識基盤に加えて「二つの専門分野」を持つ
「Π(パイ)型人材」へとニーズが広がっていきます。
2つの専門分野を持つことで、
アイデアをより深く融合するポテンシャルを持つ希少性の高い人材です。
さて、これからの社会が必要とする人材はどうでしょうか。
米国デューク大学のキャシ-・デビッドソン教授が公表した、
「2011年に小学生である子どもの65%は、
将来、いまは存在していない仕事に就くであろう」との予測は
大きな話題となりました。
今やっている仕事の多くが消滅したりAIに置き換わったりする一方、
予想もしなかった新しい形態の仕事が増えてくるということです。
いまある企業内の仕事も、
基本的にはこのような大きな流れの中で
変容していくことになるでしょう。
すなわち、ダイナミックな専門性の変動です。
デビットソン教授が指摘するような、
細分化された特定領域の専門性の賞味期間の短期化、
さらに、
寿命の延びに応じて社会保障制度を健全に維持するために、
あるいは、健康寿命の長期化に伴い、
長く働きたい人の増加による職業人生の長期化。
このような、一つの短期化と一つの長期化の結果として、
私たちには、型にとらわれずに、
専門性を柔軟に進化・変化させていく力が要求されてきます。
専門性をスクラップ・アンド・ビルドしていく力です。
ジョブ型雇用を採用する企業が出てきたように、
急速な技術革新をはじめとした環境変化の中で、
企業は専門性を尺度とした人材価値の再評価を始めています。
自分の専門性に自分で責任を持ち、
自律的に専門性をマネジメントしていく時代の到来です。