友人が勤める資産運用関係の会社では、
週2回出社の形が日常化しているそうです。
一方で、別の友人が勤める同業企業は原則出社とのこと。
同じ業界でも経営者の考え方によって、
労働形態に違いが出ているのが現状です。
さて、リモートワークであろうがなかろうが、
変わらずに進んでいくものがあります。
第4次産業革命と呼ばれる技術革新による社会変化です。
AIやビッグデータ、IoT(モノのインターネット)や
ロボット化などに代表されるデジタル技術の飛躍的な進化。
それらが、人の価値観やニーズの多様化とあいまって、
一段と多種多様な商品やサービスが生まれていきます。
20年3月に利用が開始された5G(第5世代移動通信システム)も、
デジタル革命をガンガンと後押ししていくことでしょう。
このような環境下で、ビジネスパーソンとしての私たちの
周りで起きているのが、より一層の専門性の多様化と細分化です。
席が隣同士の人でさえ得意とする分野の知識やスキル
が異なってきて、自分の得意なことは分かるが、
それ以外のことはよく分からないというケースが増えてきています。
そこで起きてしまうのが「車輪の再発明」です。
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横方向の相互支援
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「車輪の再発明」とは、もとは”reinventing the wheel”という英語の言い回しです。
車輪の存在を知らずに乗り物を作ろうとしたら、
あれこれやっているうちに、結局、車輪を発明した。
最初から車輪の存在を知っていたら、もっと早く乗り物を作れたのに。
つまり、すでに存在するもののことを知らなかったために、
時間を無駄にしてしまうという意味です。
いちから調べたことを、実は隣の人がすでに調べていた。
逆に、自分過去に作った資料と同じような資料を、隣の人がまた作っている。
そのようなとき、「こういう技術がすでにあるよ」
「この資料が使えるかもしれないよ」「やったことがあるので参考になれば」
――日頃から、このように教え合う仲間がいれば、どれだけ助かることでしょう。
これは、組織的な上下方向の関係ではなく、チームメンバー同士で
情報を共有しながら助け合おうとする、横方向の相互支援関係です。
チームにどれだけそのような文化があるかで、
今後の成果や生産性は大きく変わってきます。
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「お互い様精神」が生きてくる時代
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私が資産運用コンサルティングの仕事をしていた米国企業には、
この点で良いチーム文化がありました。
たとえば、コンサルタントが担当顧客からの問い合わせに対して
回答資料を作成しようとするとき、
「いま、このような問い合わせに対して回答を準備中」という情報を
チーム内で共有します。
何の反応もないときもありますが、
「私も同じような案件に対応中」「参考資料をどうぞ」
「たしか、米国のKさんが詳しいよ」などのレスポンスが、
同僚コンサルタントから一斉に返ってくるときもあります。
それによって、車輪に関する情報が一瞬で集まり、
最大効率・最短時間で的確な回答を作成することができるのです。
そうでなくても、このような情報が常に共有されていれば、
後日、別のコンサルタントが「そういえば誰かこの案件をやっていたな」
と思い出して協力を求めることもできます。
これは、
メンバー同士が「win-win」の関係となることはもちろん、
チーム全体の生産性も高まるようなチーム文化です。
専門性がより多様化、より細分化していく時代には、
横方向の相互支援の力があるチームが、高い生産性で成果を出していくチームです。
私たち日本人が古くから大切にしてきた
「お互い様の精神」が、いまこそ生きてくる時代なのです。