今年6月に社長に就任した富士通の時田隆仁氏が
『週刊東洋経済(9月21日号)』でこのような話をされています。
ある銀行向けの商談で、
中国系のベンチャー企業に競り負けたことがある。
彼らは客から話を受けた翌日に、
タブレット上で操作できるアプリの試作品を作ってきた。
一方、我々は1週間後にスライドを使って提案しただけだった。
実際の敗因はわからないものの、
我々は素早い開発スタイルに転換し切れていない。
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最初の1枚をいかに早く出せるか
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私が経験した米国資産運用企業での仕事の進め方が、
この中国系ベンチャーのやり方によく似ています。
たとえば、
社内で何か新しいアイデアを形にしようと思ったとき、
じっくり考えた企画書で議論にかけるのではなく、
とりあえず「すぐに」メモを1枚作って、
「すぐに」関係者と議論する。
その場で内容の妥当性を確認しながら必要な修正を施して、
「すぐに」行動に移すというパターンです。
ポイントは、十分な情報がない中で
この最初の1枚をどれだけ早く出せるかです。
何のために、
いつまでに、
何をやって、
その結果何が変わり、
ビジネスにどう影響するのか。
これを、目下の経営戦略や業務方針と整合的な内容で、
「断定的に」決め打ちで箇条書きにします。
これが抽象的な表現や曖昧な内容になっていると、
議論も抽象的なものになり前に進まないので、
思い込みでかまわないので「断定的に」書くことが大切です。
私の周りにいた「できる」ビジネスパーソンは
高スピードでこの最初の1枚を出す力に優れていました。
彼らとて、十分な自信があるわけではなく、
わからないことだらけの状態です。
しかし、とにかく決めて行動することで、
不足していた情報は磁石のように集まってくる。
だから、方向性さえ間違っていなければ
雑でもかまわないから早く出すことが重要。
そう考えています。
もちろん、その後に判明した必要な修正は
躊躇せずに反映することも当然としています。
じっくりと考えてからスタートするよりも、
この方法の方が最終的に早くて質の高いアウトプットとなります。
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「巧遅は拙速に如(し)かず」
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「やるからわかる」というのが米国企業、
「わかってからやる」というのが日本企業、
この考え方の違いが、日系企業を2~3倍上回るといわれる
外資系企業のスピードを生んでいるように思います。
米国企業に限らず、冒頭の中国系ベンチャー企業も
「やるからわかる」の精神で
顧客にぐいぐいと食い込んでいったのではないでしょうか。
「巧遅は拙速に如(し)かず」
という中国の言葉があります。
できあがりがいくら立派でも遅いのは、
できがまずくても速いのに及ばない、という意味です。
彼らは古くからある、
この中国の精神を引き継いでいたのかもしれませんね。
じっくり考えているうちに、
周りはどんどん先に進んでしまうという現実、
考えているだけでは正解は見つからないという現実、
試行錯誤を高速で繰り返すことで
やがてゴールが見えてくるという現実。
私たちは、この3つの現実から目をそらすべきではありません。