「この仕事しか知らない」と言う人は、その仕事を知らない

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1990年代に証券会社に勤めていたときの話です。

私が課長として担当していた業務は、
数学や統計を利用した証券市場分析や資産運用の開発といった、
当時の日本ではまだ新しい分野でした。

 

当社を含めた各証券会社が、
その分野に一斉に取り組み始めていました。

 

理論的なお手本は米国にあったので、
まずは、それをトレースすることから始めればよかったのですが、
日本の証券会社として日本のビジネスを対象とした場合、
どのような人材と体制で取り組むべきなのか?

この点については、私は自分の会社のことしか知りませんでした。

 

そこで、競合関係にある2社の該当する部署を探し出して
意見交換の場を申し入れたのです。

どちらの会社も太っ腹で、
「ぜひに」とのことで受けてくださいました。

 

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他社を知るから自社が分かる
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結果的に、この交流はとても価値がありました。

 

既存組織の強みをどう生かしているのか?

営業部門を始めとした他部門とどう連携しているのか?

ビジネス的にどこに焦点を当てようとしているのか?

どの程度の力のある役員の傘下に置かれているのか?

などなど。

 

単に勉強になっただけでなく、他社を知ることで
自分の会社を客観的に見ることができたのです。

 

自分の会社のことであるにもかかわらず、
それまで見えていなかったことが、
他社と比較することによってあらためて浮き彫りになってきました。

 

というより、
私がいかに自分の会社のことを分かっていなかったか
ということを思い知りました。

 

私は、こう思うのです。

「自分の会社しか知らない人は、自分の会社を知らない」

 

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「学校教育しか知らない」という先生の危機感
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かつて、小中学校の先生に講演をさせていただいたとき、
ある先生がこうおっしゃっていました。

 

「自分たちは、学校教育という狭い世界しか知らないので、
いつも民間企業などの外の世界のことを知りたいと思っている。

外の世界を知らずして、自分たちがやっていることを
本当に理解しているとは言えないと思うのです」

 

「学校教育しか知らない人は、学校教育を知らない」

 

おそらく、その先生も私と同じような気持ちを
持っておられたのだと思います。

 

 

「いまの会社しか知らないのだけど・・・・・・」

「この仕事しか知らないのだけど・・・・・・」

「日系企業のことしか知らないのだけど・・・・・・」

 

もし、こう思っている人がいたとしたら、
実は、いまの会社のこと、この仕事のこと、日系企業のことを
本当は知らないのだと思います。

 

だからといって、それがダメだというわけではありません。

知らないことを自覚することができれば、
それが、外の世界に目を向けて
本当に「知る」ための行動を起こすきっかけになるのですから。

 

 

 

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