「一度決めたことはとことんやり抜く」
仕事においてこれは是か非かという話ですが、
あなたはどう思いますか?
「そりゃ、そうだろ」とA氏。
「それぐらいの覚悟がないと、何もできんわ」
「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」という、
日本電産の永守重信社長の言葉まで引用して強く主張します。
一方、B氏。
「そんなもんにこだわっとるから、ろくな成果が出んのや」
「状況を見ながら、どんどん変えてかないとダメやで」
「新しいことを始めるとき、間違いを犯すことがある。
最善の策は間違いをすぐに認めて、改善し続けることだ」
と、こちらはスティーブ・ジョブズの言葉を持ち出して対抗します。
まあ、架空の議論ですが、ありそうな感じしませんか?
でも、この議論は、おそらく最後までかみ合わないと思うんです。
なぜなら、「決めたこと」の中身が具体的ではないからです。
たとえば、ある営業マンが、大手のX社を攻略しようと、
毎日かかかさず訪問することを決めました。
最初の一週間は門前払いです。
でも、「一度決めたことはとことんやり抜く」
との固い決意で、諦めずに通い続けます。
二週目も会ってくれません。
それでも、諦めませんでした
3週目が終わる頃、X社から上司にクレームの電話が来ました。
「迷惑だからいい加減にしてくれ!!」
B氏が「そらみたことか」とA氏に詰め寄ると、
A氏は、「やり方が悪かったんだよ」
私の考えは、決めたことが「目的」の場合、
「とことんやり抜く」気持ちで臨んだ方がよく、
決めたことが「手段」の場合、ある程度はとことんやるが、
やってみてダメそうだったらさっさと別の方法に切り替える。
こんな感じです。
大手のX社を何としかして攻略する、
という「目的」はひとつのゴールなので、
一度決めたらとことん挑戦すればよいのですが、
その手段としての「毎日通う」は、効果の有無によって、
続けるのか別のやり方に変えるのかを冷静に判断すべきです。
つまり…
次のような場合には、手段を変更する合理性があります。
・目的が変わったとき
・目的は変わらないが環境が変わったとき
・その手段ではうまくいかないとき
・さらに良い手段が見つかったとき
永守氏の「出来るまでやる」は、
「目的を諦めないで、ありとあらゆる手段をやってみろ」
ということだと思います。
スティーブ・ジョブズの「改善し続けること」とは、
「目的を手にするために手段をより良いものに変えていくこと」です。
二人とも、同じことを言っているのだと思います。
仕事でチームを率いているマネジメント層の人にとっては、
この視点は重要です。
ある方法でやっても、なかなかうまくいかないときは、
やり方が間違っているのではないかと考えるべきです。
それだけでなく、設定した目的そのものが本当に適切かという点も、
マネジメントとして常に検証していく必要があります。
目的にはレベルがあります。
X社に割く時間を別の見込み客に使う方が、
ビジネスを拡大するという「もっと上位の目的」から見て、
正解かもしれません。
「手段の妥当性」と「目的の妥当性」は、
最前線で必死になって働いている部下には見えなくなるときがあります。
「一度決めたことはとことんやり抜くぞ~!」
と、普段は活を入れながらも、
その点を冷静に見ておくのがマネジメントです。