新任管理職として初めて部下ができたとき、自分はやっていけるのだろう
かという不安な気持ちになることは不思議ではありません。プレーヤーと
しての実績は出してきたものの、管理職としては素人だからです。
その裏返しとして、一刻も早く部下に認めてもらいたいという気持ちにな
るのも当たり前の心境です。
ビシバシと的確な指示を出したい、他部門との交渉は負けてはならない、
いざというときには頼れる上司でありたい―――こういう思いは私にも経
験があります。
しかしこの思いは、時として空回りしてしまうことがあります。それらは
すべて、部下の目を気にした思いだからです。
上司としての自分をアピールしようとする思いが強すぎると、上司は部下
の方を向いて仕事をしてしまいます。こう言ったら部下はどう思うだろう
か、部下は喜んでやってくれるだろうか、部下は自分を信じてくれるだろ
うか。
そうすると、次第に部下も上司の方を見て仕事をするようになります。こ
の報告で上司はどう思うだろうか、この意見を上司は気に入るだろうか、
この程度で上司は満足してくれるだろうか。
お互いの反応を気にするため、上司の視線の先には部下があり、部下の視
線の先には上司があります。
すなわち、上司と部下が向き合った位置関係にあるのです。
しかし、これは決して健全な位置関係とは言えません。
なぜならば、上司も部下も同じチームの一員であり、チームとして成果を
出す仲間だからです。
上司と部下の位置関係は、向き合っているのではなく、隣同士に並んで
同じ方を向いているべきなのです。
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並んで同じものを見る
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両者の視線の先にあるのは、顧客であり、チームの目標であり、あるい
は、立ち塞がっている難題や乗り越えなければならない問題です。
本来、上司と部下が考えなければならないのは、そこへ向けてどのように
力を合わせていくかです。意識すべきはお互いの反応ではなく、チームの
成果に向けた同じ問題意識です。
私たちが向かうべき目標は何か?
私たちの目の前にどのような問題があるのか?
それを私たちはどのように解決できるのか?
私たちにとって、もっといい方法はないのか?
私たちはどのように協力し合うべきか?
お互いに向きあっていると、私は部下にどう思われているだろうか、私は
上司にどう見られているだろうかと、主語を「私」で考えてしまいます。
しかし、同じ方を向くことで、「私」が「私たち」に変わります。共通の目
標、共通の問題、共通の顧客に対して建設的な議論がなされるようになり
ます。
そのような上司と部下の相互作用によって、上司の力量を超えた組織力が
生まれていきます。それが管理職のチームマネジメントです。