ハリー・ポッターの著者ローリング氏の映画化の悩みとは?

├リーダーシップを磨く

レンタルしたDVDに付いていた、『ハリー・ポッター』シリーズの原作者、J.K.ロー
リング氏へのインタビューが興味深い内容でした。

ローリング氏は、「この先どうなるのか?」という読者のドキドキ感やハラハラ感を
大切にするため、『ハリー・ポッター』シリーズにおいては、次作以降の内容をトッ
プシークレットとして執筆してきました。

確かに私たちも、「スネイプ先生は何者なのか?」「残りの分霊箱はどこに?」な
ど、あれこれと勝手な想像を膨らませ、それが明らかになったときの驚きや、やっ
ぱり感を楽しんでいました。

シリーズが出版されるたびに映画化されていくのですが、そこでローリング氏が
悩んだことが一つあったそうです。

それは、映画の脚本を担当するスティーブ・クローブス氏に、どこまで先の内容を
ネタバレすべきか、という点です。

 

『ハリー・ポッター』シリーズは全7巻(映画は8作)を通して一つの壮大な物語で
す。その中で、人物やエピソードが計算された尽くした関係性と整合性をもとに描
かれています。そして、それらが作品を重ねることに少しずつ明らかになっていく
のです。

1作目から登場する人物の人間関係が3作目で明らかになり、「えっ、うそ
っ!!!」とか、2作目の伏線が6作目で回収され、「そうそう、あそこが疑問だっ
たんだよな!」とか、最後に全てが分かって、「なるほど!それで合点がいった」
など。

もし、先の展開を秘密にしたままクローブス氏に脚本を委ねると、思惑とは逆の
印象を与えてしまったり、サプライズを起こすための大事な伏線がカットされたり
する―――このような危険性があるのです。

そこで、ローリング氏は、クローブス氏にだけは、「絶対に秘密だからね」という条
件でその先のストーリーを教えたそうです。それによって、映画作品でも、伏線や
エピソードが原作と同じトーンで正しく表現されたとのことです。
良い映画作品になるよう、クローブス氏を信じたローリング氏の判断でした。

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全体像を正しく共有する
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私たちも誰かに仕事を頼むとき、つい、背景や目的を伝えるのを怠ってしまうこと
があります。あるいは、秘密が漏れるのを防ぐために、あえてそこを隠してしまう
ことも。

そうすると、ジョブ(仕事)ではなく断片的なタスク(作業)頼んだことになって
しま
います。にもかかわらず、工夫してやれとか、もっと考えてやれなどと言うのは、
あまりにも身勝手です。

誰がやっても変わらない簡単なタスクであればまだしも、アウトプットの質や、本
人の主体性や工夫を期待するのであれば、仕事の「全体像」を的確に伝える必
要があります。

 

全体像とは、たとえば

 何のための仕事かといった「目的」
 どのような経緯があるのかといった「背景」
 どのようにそれが使われるのかといった「位置づけ」
 全体の最終形はどうなっているのかといった「ゴール・イメージ」

などのことです。

ローリング氏がクローブス氏を信じてシリーズの全体像を伝えたからこそ、映画
版も、1作ごとにサプライズに納得感が伴う作品になっています。この二人の共
同作業を通して、両者の間には強い信頼関係が生まれたとのことです。

少しでも良い仕事をしたいと思ったら、相手を信じて可能な限りの全体像を伝え
ることが大切です。仕事の質が高まるのはもちろんのこと、相手との信頼関係も
高まるからです。

 

 

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