自律型人材の育成に決定的に欠けている視点

├部下の成長を支援する

正解のない時代において、どの企業も自分で考えて自分で行動する自律型人
材の育成に躍起になっています。

そのために、昔のように上司が部下に一方的に教えるのではなく、「問い」
を投げかけることでまず部下に考えてもらうという育成スタイルも広がっ
てきたように思います。

質問によって相手の思考の広がりと深まりを支援して、自分で考えることが
できる人材へと成長してもらいたいというわけです。

 

たとえば、常に誰かの指示を仰ごうとする若手に対して、「あなた自身はど
う思うのか?」と問いかけ、回答に対して「なぜそう思うのか?」「もう少
し具体的には?」「困難があるとすれば何か?」「私がサポートできること
は何か?」など、自分で考えることを手伝います。

 

あるいは、ピント外れの資料をつくっている若手に、「この資料の本来の目
的はなに?」「伝えたいメッセージをひと言で言うと?」「誰が何を理解で
きればよいのか?」などと問いかけ、軌道修正への気づきを促します。

 

問いかけるテーマは仕事のやり方(HOW)だけではありません。その仕事
の目的は何か、なぜその仕事があるのか、その仕事は誰のためのものかなど、
全体像を理解してよりよい仕事をするためのWHYやWHATの領域にも
及びます。

このような問いかけのスキルを磨くために、部下に何をどのように問いかけ
ればよいのかといった管理職研修なども行われています。

 

しかし、実際の職場からは聞こえてくるのは、そのようなやり方で部下と関
わってはいるのだが、なかなか自律型人材へと成長してくれないという管理
職の嘆きです。

 

なぜそのようなことが起きるのでしょうか?

 

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「問い」の目的を勘違いしている
-------------

 

その大きな原因は、「問い」の目的を「自分で考えてもらうこと」だと勘違
いしていることです。

 

ん? それでいいんじゃないの?

 

こう思ったアナタはみごとに「問い」の罠にはまっています。

 

人材育成における「問い」の本質的な目的は、「主体的に考えて行動する自
律型人材の育成」です。「自分で考えてもらうこと」は、そのための最初の
一歩に過ぎないのです。

つまり、部下が「問いかけられたから考える人材」から、「わざわざ問いか
けられなくても、主体的に考えて行動することができる人材」へと成長して
いくことが必要なのです。

そのために、問いかけられなくても自分で考えて行動しようとすることへの
動機づけが必要なのですが、「問い」の目的を「自分で考えてもらうこと」
ことだと勘違いしてしまうと、上司は質問して終わりです。

 

人は質問されればそれなりに考えます。そして、それを行動に移していくで
しょう。しかし、その結果が芳しくなければ、いつまでも義務的な思考と行
動しかできません。

部下は質問しなければ考えないままで、上司はいつまでたっても質問し続け
なければならないのです。

 

では、何が主体的に考えて行動することの動機となるのでしょうか?

 

それは、「自分で考えて自分で行動した結果、うまくいった」という成功体
験です。

 

上司に問いかけられて自分で考え行動して結果うまくいった――――この成
功体験が積み重なっていくことで、自分で考えて行動することへの喜びと自
信を手にし、徐々に、これまで上司から問いかけられたようなことを自分自
身に問いかけて行動するようになります。

それが、自律型人材への成長です。

 

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あの手この手で全力でサポートする
-------------

 

繰り返しますが、管理職の本質的な役割は質問することではありません。質
問をきっかけとして自分で考えたことを行動に移して、その結果うまくいっ
た――――このような部下の成功体験を全力でサポートすることです。

それを踏まえた上で、上司が気をつけておくべき点を2つ述べます。

 

1つめは、「問い」は自分の正解に誘導するためではないということです。
それをやってしまうと、相手に「答えを言わされた感」が残ります。あるい
は、結局自分の考えに誘導するのか、といった反発心まででてきます。

上司が気に入りそうな回答を探すのは単なる正解探しであって、決して自律
的な思考とは言えません。

「問い」は相手が自分で考えて行動することを手伝うためのものです。した
がって、「問い」に対する相手の回答が多少自分の考えと違ったとしても、
一定の許容範囲内であれば細かいことは言わずにOKを出すことが必要です。

また、自分も相手も正解が分からない場合も同様です。経験豊富な上司が先
に自分の中で正解らしきものをつくって、それを部下に教えたいという気持
ちを抑えることが大切です。

 

注意点の2つめは、OKを出した相手の判断がうまくいくように、あの手こ
の手で全力でサポートすることです。

過剰に介入することはよくありませんが、注意深く部下の行動をモニターし
ながら、もし道が外れそうになったら「この仕事の本来目的は何かな?」「障
害があるとすれば何かな?」「私にどんなサポートができる?」と、適切な
タイミングで問いかけるとよいでしょう。

 

何度も繰り返しますが、自分で考えてやってみた結果がうまくいくからこそ、
再び自分で考えて行動してみようと思い、その積み重ねによって質問されなく
ても自分で考え行動する人材へと成長していくのです。

 

部下に自律型人材へと成長してもらいたいと思うのであれば、部下に問いか
けた先の責任をしっかりと果たす覚悟が上司には必要です。

 

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