企業の管理職のAさんから、「何となく自分を嫌っている部下の存在が気に
なる」という話を聞きました。
仕事に関する最低限の会話しかない。声を掛けても反応が薄く、面倒くさそ
うにしているとのこと。個別面談のときに、「何か仕事に不満があれば」と
投げかけても「特にありません」とだけ。
Aさんは、「どうしたものか」と考えてしまうそうです。
私も含めて、管理職経験のある方なら、多かれ少なかれ同じような経験があ
るのではないでしょうか。
このような場合どうすればよいのでしょうか。
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コントロールできないことに悩んでいないか?
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まず、そもそも、相手が自分を好きか嫌いかは相手の勝手であって、自分の
思い通りになどならないということを理解すべきです。
その上でAさんのように悩んでしまうのは、「上司は部下から好かれなけれ
ばならない」という思い込みがあるからです。
その思い込みがあるから自分が苦しくなり、それをどうすることもできない
自分が情けなくなってしまうのです。
管理職にとって大事なことは、メンバーと力を合わせてチームの成果を最大
化することです。もちろん、そのために、部下と良好な関係を築くために努
力することは大切です。
しかし、結果的にそれができない部下がいたとしても、「相手の気持ち」と
いうコントロールできないことに焦点を当ててしまうと、自分のストレスが
溜まるだけです。
心理学では、このような思い込みのことを、「ビリーフ(belief)」と呼びま
す。「上司は部下から好かれなければならない」といった不適切なビリーフ
を持っていると、それが重りのついた足かせのようになって、考え方や行動
に制約をかけたり、気持ちが落ち着かなくなったりします。
そこで、不適切なビリーフを適切なものに置き換えることが必要です。たと
えば、「上司は部下から好かれなければならない」というビリーフを、「上
司は部下から好かれるに超したことはないが、好かれなくても仕方がない」
というように。
こうすれば、気が楽になって仕事に集中することができます。
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ビリーフの書き換えには人の力を借りる
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Aさんも、「仕事に支障をきたしているの?」と聞くと、別にそういうわけ
ではないとのこと。「あなたと他の部下との関係は?」と聞くと、そこそこ
うまくいっているという。であれば、何の問題もないのではないでしょうか。
なにより、相手が本当に自分を嫌っているのかどうかさえ分からないわけで
す。百歩譲って、もしそうだったとしても、そのことと、自分が管理職とし
ての役割を果たしているかどうかは全く別の問題です。
もし、「上司は部下から好かれなければならない」というビリーフを捨てき
れずにいると、部下から好かれることが目的化してしまい、率直にものが言
えなくなったり、自分の弱い面を隠したり、逆に意味のない強がりを見せた
りしてしまいます。
そのような態度こそ、部下から見透かされて嫌われる要因になってしまいま
す。
ただし、ビリーフは「思い込み」ですから、なかなか自分で気づくことはで
きません。そこで、悩みや気になっていることがあれば、信頼できる人に相
談してみるとよいでしょう。
第三者の目から見た感想や意見を聞きながら話をすることで、自分でそのこ
とに気づいていくことがありますし、相手が直接指摘してくれることもあり
ます。
悩みがあるときは、それを何とかしようとすることだけでなく、その悩み自
体が本当に問題なのかと考えてみることです。ビリーフの書き換えによって、
問題自体がなくなってしまうことがあるのですから。