「地球は平面だ」と主張する集団の確証バイアス

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日本版Newsweek誌2019/7/2号によると、
「地球は平面だ」と主張する「フラットアース論者」の集団が、
米国で活動を活発化させているそうです。

ウケ狙いのユーモア集団ではなく
世間から嘲笑、中傷されることを覚悟の上で、
大真面目にフラットアース論を主張しているとのこと。

NBA選手が賛同の意を表明したり(のちに撤回)、
2018年にはデンバーで600人を集めて
「フラットアース国際会議」が開かれたり。

 

米国内の多くの都市で論者を増やすための研修会が開かれており、
親が子供に「地球は平面だ」と教え、
その子供が友達にフラットアース論を吹き込んでいるなど。

もはや、笑い事では済まされないような状況だそうです。

 

そこで、このような科学軽視の風潮に危機感を持った
科学者・マッキンタイヤ氏が、
くだんのデンバー国際会議に潜入してみたというわけです。

 

マッキンタイヤ氏は、
会場での論者たちとの会話から得られたいくつかの知見を、
記事の中で述べています。

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都合の良い情報のみを選択する
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その中の1つが、
自分たちに都合の良い情報を選択し
都合の悪い情報を棄却するという論者に共通した姿勢です。

たとえば、彼らは
「NASAの写真はすべて捏造である」と主張し、
どれだけ否定しても、
重箱の隅をつつくような攻撃的姿勢で、
「100%捏造ではないという完全無欠な証拠を示せ」と迫る。

その一方で、
地球が球体であれば見ることができない
水平線の向こうの風景の写真を示し、
「どうだ、これがフラットアースの証拠だ」
と突きつけてくる。

それこそ捏造だと思わないのか?
と尋ねても、
「撮影者は信頼できる人だ」で話を終わらせてしまう。

こういう不毛のやりとりを、会場で何度も経験したとのことです。

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私たちも日常的にバイアスを持っている
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フラットアース論者たちの反応パターンを、
私たちは笑っている場合ではありません。

 

なぜならば、私たちも
同じような反応を日常的に行っているからです。

 

これは、心理学で
『確証バイアス』と呼ばれている心の動きです。

すなわち、
自分の期待や思い込みと整合的な情報は受け入れるが、
そうでないものは否定することで、
自分を正当化しようとする心理的反応です。

 

たとえば、自分のやり方が
部下の反発を招いているという指摘を受けても、
たまたま目にした、たった一人の部下の好意的な反応だけを理由に、
「やり方は正しい」と自己正当化する。

詐欺にあっているのではないか、という友人の忠告に耳を貸さずに、
だまされてはいないという材料を無理矢理ならべて自己正当化する。

気にくわない人がいる場合、
友人のその人に対する悪口には
「そうそう、そうだよね」と同調する一方、
「いい人だよ」という話に対しては、
「何言ってんの、・・・・・・」と受け入れようとしない。

 

いずれも、

「自分のやり方は正しい」
「だまされてはいない」
「あの人は気にくわない」

という『結論ありき』の反応です。

本当はどうなのかに関係なく、
結論が正当化されるような情報のみを、
選択的に受け入れようとしているのです。

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弊害ばかりではないので、健全に付き合っていく 
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確証バイアスは弊害ばかりではありません。

勇気が必要な困難な決断に向かおうとするとき、
それを後押しするような人の意見や情報を肯定的に受け入れることで、
迷いを吹っ切ることができます。

明智光秀が信長への謀反を決意するために、
神社で「吉」が出るまでおみくじを引き続けたという逸話も、
「吉」による自己正当化を求めた、
謀反という結論ありきの確証バイアスです。

謀反が、彼にとって、あるいは歴史的にどうだったかというのは
もちろん別の話ですが。

 

この確証バイアスですが、
誰もが持っている心理的反応であり、
心の中から完全に排除することは困難です。

また、自己防衛本能でもあるため、
そう簡単にコントロールできるものでもありません。

したがって、私たちは確証バイアスと
健全に付き合って行く必要があります。

そのためには、
以下のような点を心がけておくとよいでしょう。

・自分の心には確証バイアスが存在するという事実を認めること。

・「何となく、違うことがわかっているのだが・・・」のような直感を大切にすること。

・自分の判断の結果は自分ですべて引き受けるという覚悟を日頃から持っておくこと。

・「人はどう考えるのだろう?」など、視点を変えて自分自身に問いかけてみること。

・「耳に痛いことでも率直に言ってくれる人」を何人か持っておくこと。

注)「わかってくれる人」というのは、善し悪しは別として確証バイアスを増長させます。

 

私自身、自分を正当化したくて、
都合の良い事象にのみ目を向けてしまった経験が何度もあります。

そういうときは、たいてい上手くいきませんでしたけどね。

今回のNewsweekの記事で、
改めて自分自身の確証バイアスへの意識を持ち直しました。

 

余談ですが、記事の最後で
マッキンタイヤ氏はこのように述べています。

「科学の研究をしていれば、自分の仮説が間違っている可能性は常にある。
科学否定論者と異なり、その可能性を徹底的に探るのが真の科学者だ。」

科学者魂ですね!

 

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