かつて、私が働いていた金融業界で、
あるパネルディスカッションを聞いたときの話です。
当時話題になっていたあるテーマについての話ですが、
パネリストの一人は、面識のあるXさんでした。
押しの強い論客で、自説を理路整然と
しかも、熱く語っていて、
何人もの聴衆がXさんの話にうなずいています。
私も、聞いていて、「なるほどな・・・・・・」
と思う部分がいくつかありました。
しかし、しかし、しかし、
どーーーしても、いまひとつ
「そうだ、そのとおり!」と、
共感することはできませんでした。
なぜかというと、大変申し訳ないのですが
Xさんを人間的にあまり信用していなかったからです。
Xさんのこれまでの仕事のやり方や
人との付き合い方が、
「あまりにも自分勝手」だと、私は感じていたのです。
もちろん、
私の勝手な思い込みだったかもしれません。
しかし、
私が直接知っているXさんと照らし合わせても、
「いかにも」と思ってしまうような話を
人づてによく耳にしていました。
だから、事実として、
その時点で私のXさんに対する気持ちは
「信用できない人」だったのです。
ギリシャの哲学者アリストテレスは、
著書『弁論術』のなかで、人の説得に
影響するものとして次の3つを挙げています。
ロゴス (Logos ; 論理性)
パトス (Pathos ; 情熱)
エトス (Ethos ; 人徳・特性)
つまり、
論理的に話すこと。
情熱的に話すこと。
話す人が信じられること。
Xさんは、
ロゴス(論理性)とパトス(情熱)は十分だったのですが、
私から見て、エトス(人徳・特性)がイマイチだったのです。
では、こちらがプレゼンなどをする側に
立ったときのことを考えてみましょう。
ロゴス(論理)とパトス(情熱)は何とかなっても、
エトス(人徳)はその人の生き様から
じわーっと浸み出してくるようなものですから、
その時点では、もうどうしようもないのでしょうか?
実は、アリストテレスが言っている
エトスには、人徳以外にも、
専門家としての信頼感や、
聞き手に与える好感度なども含まれています。
そうすると、初対面の相手に対して
プレゼンをする場合など、
専門家としてのプレゼンスが正しく伝わるように!
聞き手から好感や安心感、共感を得るように!
この辺は、トレーニングで強化できると思います。
さらに、日頃から正しい倫理観で
良い生き方をしていると一段とエトスは強化されますね。
2000年以上も前のアリストテレスの話ですが、
「ロゴス」「パトス」「エトス」は、プレゼンを始めとした、
伝えるコミュニケーションを
伝わるコミュニケーションにするための重要な要素です。