外資系企業では上司の判断は絶対ですが、裏を返せば上司を味方につければ
これほど心強いことはありません。
そこで、「上司を説得するのが上手な人に共有する特性は?」―――友人と
話しているうちにこのような話題になりました。
話の根拠がはっきりしている人、それを論理的に伝える人。このあたりは「そ
うだよな」です。さらに、組織にとってのメリット、イコール上司にとって
のメリットを語ることができる人、これも「絶対そうだよな」です。
熱意がある人?
根底にある熱意は大事、でも、論理的に弱ければNoだよな。など話は尽き
ません。
そんな中で意見が分かれたのが、口数が多いか少ないかです。友人の周りに
いる説得上手は、どちらかというと口数が少ないとのこと。一方、私が知っ
ている説得上手は、どちらかというとよくしゃべる人です。
「あんまり関係ないのかな」なんて話しているうちに、一致点が見つかりま
した。
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おしゃべりでもポイントは絞っている
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口数が多い人でも少ない人でも、説得上手な人に共通しているのは「ポイン
トを絞っている」という点です。
上司に自分の提案を通そうとするとき、説得上手の人は、その根拠となる理
由を1点に絞って説明します。
それがどのような問題をどう解決して、我々は何を得ることができるのか?
―――これを太い軸としてどーんと提示し、それ以外の余計はことは話はし
ません。
その上で、口数が少ない人は、その軸をじっくりとかみしめるように論理的
に伝えようとします。
口数が多い説得上手な人も、決してその軸から外れることはありません。
提案の根拠としているど真ん中の軸を補強するために、例え話や関連
する事例を話しているだけなのです。
切り口を換えていろいろと話してはいても、結局言っていることは一つのこ
とです。
これに対して、上司を説得できない人ほど余計なことをあれこれと話してし
まいます。これもメリットです、あれもメリットです。ついでに、こういう
利点もあります。さあ、どうでしょうか!
これでは、本当に理解して欲しいど真ん中の軸がぼやけてしまいます。
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情報過多は付け入るスキを与えてしまう
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さらに、提供する情報量が多くなればなるほど中身は玉石混淆となります。
相手が「おやっ?」「さすがにそれはどうかな?」なんて感じてしまうスキ
を与えてしまうことになります。
話題を膨らませすぎた故に、論拠に乏しい脆弱な情報まで陳列してしまうの
です。
一つでも疑問や気に入らないことがあると、全体を否定したくなる人は少な
くありません。その話が自分にとって都合の悪いことや、正論であっても痛
みを伴うことであればなおさらです。
意味のある提案でも、その点を突かれて却下されてしまうことがあるのです。
説得上手な人は、口数の多少に関わらず、提案の根拠としている中心軸以上
に話を広げない―――このような結論になりました。
これに関しては、組織心理学が専門のアダム・グラント氏が、著書『Think
Again』(三笠書房)の中で次のように述べています。
「一流の交渉人は自分の主張の論拠をごく少数しか提示しない。持論のベス
トポイントの効果を薄めたくないからだ。これに対して平均的な交渉人は、
戦いの場にあまりにも多くの武器を持ち込んでしまうのだ」
確かに自分を振り返っても、自信がないときほど饒舌になり、余計なことま
でペラペラとしゃべって失敗していたように思います。
ということで、これ以上余計なことは述べずに今回はこの辺で。