困難な業務にチャレンジしようとする部下に
上司が、「大丈夫だ、君ならできる!」と
励ましの言葉をかける場面をよく見かけます。
私も上司から幾度もこの言葉をかけられたことがありますし、
部下にもかけてきました。
もちろん多くの上司は、うそ偽りなく部下を励まそうとして
「君ならできる!」と言っているのでしょうが、
私はこの言葉にずっと違和感を覚えていました。
あるとき、その理由に気がつきました。
「君ならできる!」は、それで会話を打ち止めにできる、
つまり言いっぱなしにできる都合のよい「気合い言葉」なのです。
「大変だろうけど、君ならできる、以上!」
そこには、「なぜ、自分は君ができると思うのか」
という根拠を説明する必要感が存在しません。
言われた部下は決して悪い気はしないでしょうが、
仕事の難易度が高くなるにつれ
「気合いだけ入れられてもな~」と感じる可能性があります。
その後、私はこう考えるようになりました。
本気で部下を励まそうとするときには、
「君ならできる」ではなく
「君だからこそできる」と言うべきだと。
そうすると、「君だからこそ」の理由をその後に言わざるを得ません。
普段から部下をよく観察し、これまでの経験や専門的なスキル、
仕事への意欲を正確に把握した上で、
自信を持って「君だからこそ」の根拠をしっかりと部下に伝えるのです。
プロジェクトでアイデアを形にする経験を積んできた「君だからこそ」、
この前の失敗からコミュニケーションの重要性を学んだ「君だからこそ」、
相手の気持ちに配慮しつつも言うべきことを言える「君だからこそ」、
そんな「君だからこそ」、私はできると信じている。
ここまで言い切る上司の「君だからこそ」で初めて、
部下は上司の期待の根拠を具体的に受け止めて勇気づけられることでしょう。
さらに上司は、「君だからこそ」の根拠を伝えたのち、
「自分にどのようにサポートして欲しいのか」
「自分はどのようにサポートするつもりなのか」
これらを事前に話し合うことが大切です。
部下に全力で取り組む覚悟を促すと同時に
自分も全力でサポートする覚悟を部下に示すのです。
私の米国人上司は困難な仕事になればなるほど、
“You are the best person, because~”
(君がこの仕事に最もふさわしい人材だ。なぜならば~)
とその理由をしっかりと語ってくれていました。
その一つ一つの言葉に、
自分をよく見てくれている上司への信頼感と、
頼りにしてされていることによる自己重要感を得て、
全力で期待に応えようという気力が湧いていました。
言葉には良くも悪しくも力があります。
そこには、無意識のうちに
発言する人の気持ちが乗り移っているからです。
上司の皆さん、
「君ならできる!」ではなく
「君だからこそできる!」に挑戦してみてはいかがでしょうか。