様々な企業の管理職の皆さんの
共通した悩みの一つに
「一人ひとりの部下とじっくり話す時間がとれない」
というものがあります。
特に、研修などを通じて、
部下とのコミュニケーションや相互理解、信頼関係などの
重要性に気づけば気づくほど、
「でも、現実的には時間がとれないんですよ……」
こうおっしゃる方が少なくありません。
私も、かつてそのように思っていた時期があったので、
気持ちは十分理解できます。
しかし、米国の企業に転職してか
その考えが間違っていることに気づきました。
時間はあるんです。
「部下とじっくり話す」ということの
『優先順位』を下げているだけなのです。
「部下とじっくり話す時間がとれない」
という人の言葉を言い換えれば、
私にとってはね、
いまやっている雑用を含めたありとあらゆる仕事と比べて、
部下と話すことの『優先順位』がどんと低いんですわ、
とまあ、こういうことなんです。
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1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング
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私が勤めていた米国の資産運用会社では、
一人ひとりの部下とのコミュニケーションは、
『優先順位の高い仕事』だと定義されていました。
ですから、多くの上司は週1回
「1on1ミーティング」と呼ばれる
部下との定期的な個別ミーティングを行っていました。
Aさんとは毎週月曜日の9時から15分間、
Bさんとは9時15分から15分間など
時間帯を決めてPC上のスケジュール表に
半年先までドバっと入れてしまいす。
で、よほどのことがない限り必ず実行します。
これは、
日本企業で言う「面談」とは全く違ったもので、
日々の仕事のスピードと質をより高めていくための
実務的なコミュニケーションです。
仕事の進め方は効率的か
問題への対処法は妥当か
次の一手をどう考えているか
モチベーションはどうか
関連部署とはうまくいっているか
困っていることはないか
上司がサポートできることはないか、
などなど、
仕事そのものを、ガンガン前に進めていくためのものです。
日々の進捗や単純な報告はすべてメールで行っているため、
あらためてそれを確認することはせずに、
フェイス・トゥ・フェイスで話した方がいいような
少しばかり立ち入ったことに絞られます。
上司と部下が定期的に話し合いの時間を持つことで、
その先の仕事の効率性と効果性に
ミーティングで使った時間の
何倍、何十倍、時には何百倍もの良き影響を与える
レバレッジ効果(テコの作用)が生まれます。
上司は上司で部下の仕事ぶりを見ていて、
必要なアドバイス、勇気づける言葉や感謝の言葉、
逆に気になったこと、ときには部下の耳に痛いことも
その時間を使って伝えます。
部下の成長のための定期的なフィードバックです。
回数を重ねていけば、
お互いが本音で言いたいことを言い合う関係もできてきます。
部下の成果に対しても、
両者の認識の食い違いがなくなるため、
年度の業績評価で大きなサプライズが
起きるようなこともありません。
彼らは、そのような時間を優先的に割くことが、
チームの成果を最大化するための
効果的な方法だと考えているのです。
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本当に優先順位が低いの?
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外資系に勤める友人たちに聞いても、
1on1ミーティングは
割と多くの企業で行われているようです。
マイクロプロセッサ界の王者インテル社の
元CEOアンドリュー・グローブ氏も、
1on1ミーティングの効果を
著書の中で力説しています。
「部下と話す時間がない」
これに限らず、
子どもと話す時間がない
親と話す時間がない
Aさんにお礼を言う時間がない
Bさんと会う時間がない
○○について考える時間がない
○○に行く時間がない
「○○の時間がない」と思っているときって、
本当にその優先順位は
いまやっていることよりも低いのでしょうか?
あらためて考えてはいかがでしょうか。