人前で話すときには緊張すべし。しかし、不安は取り除くべし。

├結果を出す力

 

私は研修や講演で講師として
人前で話す機会が多いのですが、
よくこう言われます。

 

「櫻田さん、よく、緊張せずに話せますね」

 

でも、そんなことはないんですよ。
毎回、それなりに緊張します。

 

限られた人生の中の貴重な時間を、
私と一緒に過ごしてくださる方々が目の前にいるわけですから、
絶対にその時間を無駄にしてもらいたくないと思います。

 

その気持ちを強く持てば持つほど、
講師としての責任感や使命感とともに、
自然と緊張感が高まってくるんです。

 

 

でも、これは悪いことではなく、
むしろ必要なことだと思っています。

 

ある程度の緊張感があることにより、
参加者の表情や反応に対する感度が高まり、
その場に応じた対応を柔軟に行いながら、
参加者にとっての良好な学習の場をつくることができるからです。

 

スポーツ選手やアーティストが、
試合や本番に臨むときには、
精神を集中して緊張感を高めているのと
基本的には同じではないでしょうか。

 

「緊張」の反対は「弛緩」です。

 

精神的に弛緩したゆるゆるの状態で
物事に臨んだのでは良い結果は出ません。

 

「でもでも、緊張しすぎて周りが見えなくなって、
オタオタしてしまうんですけど…」

 

ええ、私にも同じような経験がありますが、
その点はこうに考えています。

それは緊張のレベルの問題ではなく、
そこに「怖れ」があるからではないのかと。

 

評価されなかったらどうしよう…

批判されたらどうしよう…

笑われたらどうしよう…

 

まだ起きてもいないことに対する「怖れ」が、
身体と精神を硬くしてしまい、
本来の力を発揮することができなくなるのではないかと。

適度の緊張は必要ですが、
「怖れ」はできる限り取り除く必要があります。

 

そのためにすべきことは、

まだ起きていない、
しかも、そもそもコントロールなんてできない
参加者の反応に怯えるのではなく、

いま、自分ができることに焦点を当てること、
すなわち、十分すぎるほどの準備をすることです。

 

これについては、宇宙飛行士の野口聡一さん
インタビューを引用させていただきます。

 

野口さんが初搭乗するスペースシャトルの打ち上げ直前に、
地球へ帰還中のコロンビア号が大気圏突入時に空中分解し、
7名の飛行士が犠牲になるという痛ましい事故が起きます。

事故原因の究明と必要な対策が採られるまで、
全ての計画が延期されましたが、
その後、2年4ヵ月という長いブランクを経て、
野口さんは再び度宇宙へ向かうことになります。

 

事故から打ち上げまでの長い期間を
「怖い」という気持ちとどのように戦ったのですか?

というインタビュアーの質問に対して
野口さんは次のように答えています。

 

コロンビア号の事故は断熱材の不具合が原因だったが、
それも含めて「危険なことは自分の外にある」のです。

危険なのは、
ロケットであり、宇宙船であり、断熱材であり、
自分がコントロールできない所にある。

そこをいくら考えても仕方がないし、
危険を減らすために大勢の人が日夜努力をしてくれている。

一方で、 「怖さ」というのは自分の心がつくりだしている
ものであるため、自分でコントロールできるはず。

ロケットだから怖いのではなく、
宇宙船だから怖いのではなく、
断熱材だから怖いのではなく、
「自分が」怖いと思うから怖いのである。

であれば、すべきことは
「怖さ」をつくりだす自分の心を
自分ではコントロールできない外のことではなく、
コントロールできる自分に向けること。

すなわち、宇宙飛行士としての訓練を
限界まで徹底的に行うことである。

 

これしかできないが、これならできる。

 

 

実際に、野口さんたちのクルーは、
7名の搭乗員合計で38,000時間という、
NASA史上最長の訓練をこなすことになります。

 

私も、研修や講演の本番前には訪問先企業のことを調べたり、
営業の方と綿密な打ち合わせをしたり、
その企業に合った事例を探したりと、できる限りの準備をします。

心配性で不安だからです。

でも、そうやって自分ができることを1つずつこなしていくと、
どうなるか分からない結果には目が向かなくなり、
怖れは少しずつ軽減していきます。

怖れの少ない良い緊張感で本番に臨むことができると、
おおむね良い結果がついてくることが多いです。

 

講師の中には、
「いつもぶっつけ本番で、アドリブで何とかこなしていますよ」
という方もいますが、
私にはそのような芸当は、とても「怖くて」できません。

 

心配性で不安だからこそ、まだ起きてもいない、
しかもコントロールできない人の反応なんかに心を向けずに、
いま、自分ができる準備を徹底的にやる、

 

良い結果を生むための
講師としての私のスタイルです。

 

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