少し気が早いのですが、年明けのことを考えてみます。
新春の恒例行事といえば
社長さんや管理職の方の年頭訓示ですね。
まあ、別に年末と年始で
仕事が区切れるわけではないんですが、
「新年」というなんとなく新たな気持ちになる節目で、
経営者や管理職の皆さんが
自分の考えていることを伝えようとするのは悪いことではありません。
そういえば、外資系にいたとき、
外国人上司からは年頭訓示らしきものは
一度も聞いたことはありませんでした。
だって、彼らはクリスマスから年末年始をまたいで、
たっぷり2週間以上の休みをとっているので、
仕事始めの日は、まだ会社にいないのですから。
で、こちらが正月気分が抜けきったころに、
「やあやあ」という顔をして出てきて、
何事もなかったかのように仕事を始めます。
それはさておき、
どうせ社員や部下を集めて話をするのであれば、
「100%自分の言葉」で話をしたらどうでしょうか。
「いやいや、あったり前じゃないですか!」
って、思われるでしょうが、
でも、このような場面では結構多くの方が、
成功した経営者や著名人の言葉を
スピーチの中で引用するのを見てきました。
松下幸之助、本田宗一郎、
スティーブ・ジョブズ、ピーター・ドラッカーから、
ノーベル賞学者、スポーツ選手・監督、俳優、タレント、
歴史上の人物まで・・・
ありとあらゆるジャンルの有名人の言葉、いわゆる名言です。
年頭訓示に限らず、日常のスピーチの中でも、
あるいは、結婚式の来賓祝辞などでも名言の引用はよく見かけます。
もちろん、自分の伝えたいことを
より理解してもらいたいという気持ちからでしょうし、
有名人の力を借りて多少は話に箔を付けたい、
といった気持ちもないわけではないでしょう。
この日のためによりすぐった名言ですから、
「とってもいい言葉」です。
しかしですね・・・、
私はどうしてもこう思ってしまいます。
人の言葉の引用は、自分が伝えたいことを
他人の言葉を借りて伝えようとすることである。
その時点で、
スピーチは自分よりもはるかに格上の他人の言葉に制圧され、
そこに本来存在すべき話し手の強い想いは希薄化されてしまう。
スティーブ・ジョブズの名言、松下幸之助の名言・・・
インパクトが強ければ強いほどそうなってしまいます。
しかし、彼らは別に名言を残そうとして人と話したり
スピーチをしていたわけではありません。
日頃から自分が信じていることを
自分の言葉で素直に語っていただけなのです。
そこには、強固な信念や深い人生哲学、
仕事にかける熱い想い、
やり遂げるためのぶれない意志などの
彼らの想いが宿っているのです。
せっかく年始の訓示・挨拶を行うのであれば、
松下幸之助の想いでもなく、
スティーブ・ジョブズの想いでもない、
仕事や人生にかける自分自身の情熱や想いを、
「自分の言葉」で話してみてはどうでしょうか。
かっこいい言葉でなくても、
インパクトのある言葉でなくても、
その人の身体から絞り出される真実の言葉であれば、
借り物の言葉にはない話し手の魂の息づかいが感じられると思います。
その後、言行一致で言ったとおりのことを
愚直に実践し続けていけば、
いずれあなたの言葉が「名言」と言われる日が来るかもしれません。
経営や部門を預かる立場にある人であれば、
それぐらいの心意気があってもいいのではないかと思います。
では来年が、
皆さんにとってますます良き年となりますように!