「笑いながら怒っている人」を見て、人はどっちだと思うか?

├伝える力

 

かつて、デビューしたばかりの竹中直人のネタの1つに
「笑いながら怒る人」というのがありました。

「なんだ馬鹿野郎!」と大声で怒っているのですが、
なぜか、満面の笑顔なのです。

 

そのギャップにこちらが大笑いしながらも、
「こいつは天才だ!」と思いました。

まあ、ギャグであればいいんですけど、
仕事ではどうでしょうか。

 

 

職場の部下や従業員たちにも、
自分の「感情」をちゃんと伝えることは大切です。

成果を出した部下には「嬉しいよ!」

上手くいかなくて「俺も悔しい・・・」

不誠実な仕事には「ふざけるな!」

 

感情の表現は、
コミュニケーションに幅と深さを生むだけでなく、
自分のことをより理解してもらうことにもつながります。

 

ただし、そのとき、
ちゃんと感情が伝わるために注意すべきことがあります。

 

「言葉」「口調」「表情」

この3つを矛盾のないように一致させておくということです。

 

「僕は嬉しいよ!(言葉)」は、
弾むような明るい声(口調)で、
微笑みながら(表情)言うことで、
相手にちゃんと喜びが伝わるということです。

 

しかし、竹中直人の芸のように
怒った顔で、しかもぶっきらぼうな口調で
「嬉しいよ」と言ったらどうでしょうか?

 

相手は、「えっ、どっち?」

・・・なら、まだいい方です。

多くの場合は「怒っている」と受け止められてしまうそうです。

 

このことは、米国の心理学者アルバート・メラビアンによる
次のような実験で示されています。

 

ひとつの感情について、
「言葉」「口調」「表情」が『矛盾した状態』で伝えたとき
受け手はどれを優先して受け止めるかという実験です。

 

たとえば、被験者に「怒った表情の人の顔写真」を、
「優しい口調」で「感謝」という言葉とともに見せた場合、
人はどのような印象を受けるのか?

これを組み合わせを変えながら何度も繰り返します。(注)

 

(注)わかりやすくお伝えするために、
実際に行われた実験手法そのものとは多少異なります。

 

 

実験結果は、受け手は相手の感情を

表情(55%)>口調(28% )>言葉(7%)

この順番で優先して受け止めているということになりました。

 

つまり、怒っている表情で優しく「感謝」と伝えられても、
言葉や口調よりも表情を優先して「怒られている」と
感じるということです

 

せっかく感謝の気持ちを伝えようとしているのに、
これでは逆効果ですよね。

 

ということは、感情を伝えるときには、
言葉だけでなく、表情と口調も、
それにふさわしいものにすることが大事だということです。

心を込めた口調で、少しぐらいは微笑んで
「ありがとう」と言うと、受け手が混乱することはありません。

 

コミュニケーションは、
受け手がどう受け止めたかがすべてです。

伝えたい気持ちが伝わっていない、
なんてことにならないよう、
「言葉」「口調」「表情」の一致を心がけておくと良いでしょう。

 

もっとも、
「あの人は、ニコニコしながら説教しているときが一番怖い」
なんてこともありますが、

それはあくまで、それなりの付き合いを経て
学習したからわかることです。

 

 

ちなみに、メラビアンの実験を引用して、

コミュニケーションは
表情や態度が55%、口調が38%、言葉はたったの7% 、
だから身振り手振りや声の大小が、言葉よりも大事ですよ!

といった誤った解釈が一部でなされているようです。

 

これには、メラビアン自身が、
「誤解しないでほしい」と次のようにコメントしています。

 

++++++++++

私の実験は、好きとか嫌いとかいった
『感情』の伝達に限られた話である。

だから、
一般的なコミュニケーションには適用できないし、
そもそも言葉がたったの7%なんて、そんな馬鹿なことがあるわけがない。

++++++++++

 

メラビアンの実験が示しているのは、
感情に関して「言葉」「口調」「表情」が『矛盾しているとき』
人は55%の確率で表情を、28%確率で口調を
優先させて受け止めるということです。

 

決して、
一般的なコミュニケーションやプレゼンなどの伝わり具合を
3つの要素に分解しているわけではありません。

 

もちろん、通常のコミュニケーションでも、
言葉だけでなく表情や口調が大切であることには
変わりありませんが、念のため。

 

 

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