講師仲間でよく語られるショートストーリーを紹介します。
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ある人が海岸を歩いていると、一人の男が何かを拾って海に投げているのに
気がつきました。近づいてよく見ると、浜辺に打ち上げられているヒトデを
拾って、1つ1つ海に戻しているのです。
でも、浜辺には何百何千というヒトデが打ち上げられています。
1つや2つを海に戻したところで何も変わりません。にもかかわらず、その
男は1つ1つていねいに拾いあげて、海に戻し続けているのです。
不思議に思って男に聞いてみました。「いったい、何をしているのですか?」
男は、「見たら分かるだろ。ヒトデを海に戻しているんだよ。このままでは
死んでしまうからね」と答えました。
「でも、何千というヒトデが打ち上げられているんですよ。1つや2つ戻し
たところで何の意味もないんじゃないですか」と聞くと、男はまた1つヒト
デを海に投げ入れてこう答えました。
「いま海に戻したヒトデにとっては意味があるんだよ」
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「恩返し」ならぬ「恩送り」
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世の中は、自分ができることで誰かの幸せを手助けすることの「連鎖」だと
思います。
学生時代によく食事をおごってくれた先輩は、「あなたも後輩に同じこと
をしてやってくれ」と言っていました。直接的な「恩返し」ではなくても、
受けた恩を誰か別の人に送る「恩送り」ですね。
だから、手助けをする相手がたった一人であっても、意味がないなんてこと
はありません。もちろん、相手にとっては大きな意味がありますが、それだ
けでなく、そこから何人、何十人へと続く「恩送り」が始まるのですから。
『刻石流水(こくせきりゅうすい)』という言葉があります。
仏教経典の「懸情流水 受恩刻石(懸けた情けは水に流せ、受けた恩は石に
刻め)」から来ているそうです。
受けた恩を必ず誰かに返す「恩送り」の気持ちを忘れずに生きていきたいですね。