羽生善治の「負けました」の判断基準

├決断力を高める

 

将棋というゲームがあります。

自分のコマのうち、「王将」を
取られたら負けというルールです。

 

しかし、実際の対局ではそこまで行かずに、
どちらかが自ら「負けました」と宣言して終了します。

 

どう見ても形勢不利で逆転はあり得ないとか、
手筋を読むと間違いなく詰んでいるという段階で、
「負けました」と敗北宣言をする(投了する)という
暗黙の、しかし過酷なルールです。

 

プロ棋士の対局などでは、
身を切られる思いで「負けました」との言葉を
口にせざるを得ないのではないかと思います。

その時の心情や如何に、ですが、
この点に関して、棋界の頂点に立つ羽生善治さんは
「自分なりの投了の基準」を持っているそうです。

 

すなわち、

「相手がたとえ1手ミスをしたとしても、
それでも逃げることができない状況だと思ったとき」

とのこと。

 

プロ棋士でもミスをすることはあります。

その時は分からなくても、
後であれはミスだったと分かることもあります。

 

もちろん、一部のトッププロにしか
分からないようなミスかもしれません。

 

そのような状況下で、羽生さんがこれまでの
数限りない対局経験から生み出した基準なんでしょう。

 

彼のような最高のプロでも、自分なり基準を持っていないと
もしかしたら、決断を躊躇してしまうのかと思うと、
勝負の世界の厳しさに胸が熱くなります。

 

仕事でも似たようなことはあります。

何かをやめるとき、撤退するとき、
関係を終わらせるときなどです。

 

将棋のような勝ち負け戦と違って、
よりいっそう決断へのためらいが起きやすいかもしれません。

しかし、やめ時を違えると大きな損失に繋がり、
取り返しがつかないことになりかねません。

さらに、「ただ単にやめる」だけでなく、
「その代わりに何かやる」ということとセットになっている場合、

すなわち、このことにつぎ込んでいるリソースを
別のことに回せば新しい展開が開けるという場面です。

こんなときには、切り替え時を間違えると、
新しい機会を逸することになります。

 

しかし、
迷いに迷ってなかなか決断できないのが人間ですので、
羽生さんのように自分なりの基準を持っておく
というのが1つの考え方です。

私は、このような基準を「レッドライン」と呼んでいます。

状況がレッドライン、すなわち基準としている一線を越えたら、
「やめる」あるいは「他のことに代える」
と、あらかじめ決めておくのです。

 

もちろん、この基準に絶対の正解はなく、
自らの経験の中から生みだしていくしかありません。

このレッドラインは、
日常のもっと小さなことでも定義できます。

チームメンバーの仕事ぶりを見ていて、
状況がこの一線を越えたら介入するとか、

言動がこの一線を越えたら、
さすがにひとこと説教するとか、

この一線を越えたら、絶対に許さないとか・・・・・・

 

メンバーとの関係性を考えるあまり、
言うべきことが言えないという上司の話も聞きます。

そのようなときのためにも、
自分なりのレッドラインを決めておくと、
迷いが少なくなります。

 

私は常々部下に対して、

「一人一人の個性や価値観、それに基づく言動は尊重するが、
人の足を引っ張ろうとする行為だけは絶対に許さない」

と、レッドラインを明言していました。

 

まあ、そういう部下はいませんでしたが、
このような形で「ここを越えたらやばいぞ」
というチームの共通認識を形成するのもマネージャーの役割です。

 

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