ダイオウイカ・プロジェクトの陰の立て役者

├リーダーシップを磨く

 

先日、このコラムで、ダイオウイカで有名になった
国立科学博物館の窪寺恒己博士のことを紹介しました。

 

2012年の夏、世界で初めて、
深海で生きているダイオウイカを目撃、
その生態撮影に成功したのです。

 

その後、窪寺博士は各種のメディアから引っ張りだこ
(イカなのにタコ?)で、一躍、ときの人となりました。

 

 

私も、会社勤めをしているときに、
いくつものプロジェクトに参加した経験があるからわかるんですが、
こういうときって、表には出なくても、
プロジェクトを支え続けた陰の立て役者が必ずいるんです。

 

今回のダイオウイカ・プロジェクトでは、
NHKエンタープライズのプロデューサー・岩崎弘倫さんが
間違いなくその一人だと思います。

 

 

自然科学分野のプロデューサーとして
昔から面識のあった窪寺博士とは、
10年以上も前からダイオウイカの調査について
協力体制をとっていました。

 

調査船で小笠原海域へ同行したり、
水中カメラで撮影を試みたり。

 

 

そのうち、
最終的に深海艇で潜って世界初の動画撮影に挑戦する、
というアイデアが芽生えてきました。

 

しかし、社内の番組企画に提案しても
「そんなギャンブルのような・・・」で、毎年、脚下の連続。

 

それでもあきらめずに、日本でダメなら海外だ!って、
フランスで開催された国際テレビ見本市に企画を持ち込むことにします。

 

そして、「ディスカバリー・チャンネル」でおなじみの
米国ディスカバリー社がなんとその場で「やりましょう!」と。

 

 

 

やっとの思いで社内を説得し、2009年度から3年間の期限で
国際共同製作プロジェクトをスタートさせます。

 

 

「あきらめないことは大事」って簡単に言いますが、
なかなかそれができないのが人。

 

でも、本当にあきらめない姿を見せていれば、
お天道様はちゃんと見ていてくれるんですね。

 

 

 

ところが、ところが、
無人の深海カメラで撮影に臨んだ2009年、2010年と、
ほとんどめぼしい成果が得られず、

「やっぱ、無理じゃん」との空気が社内を支配します。

 

 

プロデューサーから自然科学番組の部長に昇格して、
デスクワークに追われるようになっていた岩崎さん、

 

ここである決断をします。

 

 

なんと、自ら部長職を辞して、一プロデューサーとして
ダイオウイカ・プロジェクトに専念することを会社に申し出ます。

 

「このプロジェクトにかける!」

との覚悟です。

 

 

世界11ヵ国、50人を超える
専門スタッフとのコミュニケーション、

超高感度カメラの開発、

深海艇、支援母船の借用交渉、

社内の中止圧力に対する身を挺した抵抗など、

 

「撮れなかったら、岩崎は家を売るんだよな」

との声の中、

プロジェクトの推進のために東奔西走します。

 

 

 

そして、潜水艇のトラブルなどで
一年延期されたプロジェクトの最終年、
ついに、あの「奇跡の遭遇」へと時が進みます。

 

 

 

岩崎さんなくして、
ダイオウイカの撮影は起きえなかったといえるでしょう。

ここでも、お天道様は岩崎さんの「覚悟」を
見ていてくれたんですね。

 

 

一連のプロジェクトを記録した
ドキュメント本の最後にはこう記されています。

 

 

「このプロジェクトに参加したのは、
 ほんの少しの夢と情熱を持ち続けたごく普通の人々だ。

 

 地道に研究を重ねてきた科学者、

 休むことなく撮影に挑んできたカメラマン、

 苦労をいとわなかったディレクター、

 現場に戻り陣頭指揮を取ることを選んだプロデューサー・・・

 

 成功など、全く約束されていない。

 

 日々孤独感に苛まれ、苦しむことはわかっていても、

 誰も挑戦を辞めなかった。」

 

 

『深海の超巨大イカを追え!』より
(NHKスペシャル深海プロジェクト取材班+坂元志歩著、光文社新書)

 

 

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