当代きっての人気狂言師、野村萬斎さん。
48歳になった昨年、
野村家に伝わる254演目の頂点に立つ一子相伝の秘曲
『狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)』に初めて挑みました。
師匠であり父親である人間国宝の野村万作さん(83歳)の
後ろ姿をずっと追いながら生きてきた自分が
この究極の演目をどう演じるのか、
苦悩しながらも挑戦していく様子をNHKの番組
『プロフェッショナル~仕事の流儀』が追っていました。
番組の中で、父親の野村万作さんが、
「時の花を咲かせる」という言葉を使っていました。
子供のころからやっていれば技術は身につく。
しかし、そのまま固めてしまうのではなく、
それに自分を加えて初めてその人の世界になる。
20代、30代・・・60代、70代、80代
それぞれの歳でしか咲かせることができない
「時の花」がある。
「時の花を咲かせる」
狂言という伝統芸能の世界だけでなく
私たちの生き方にも示唆を与える言葉です。
一方、息子の野村萬斎さんもこう言っています。
ここまでの自分は、父親からの学びで成り立っているが、
いま、その自分とは違う面を探している。
それは、体力とか若さでは演じきれないものである。
これまでの積み重ねを踏まえたうえで、
体力とか若さで演じるのではない自分を求めて、
すなわち「48歳の時の花」を求めて、
苦悩と試行錯誤の日々が続きます
そして、悩みに悩み、考えに考え抜いた末に、
大一番の見せ場で、独自の振り付けを取り入れた
野村萬斎の『狸腹鼓』を演じ切ります。
同じ舞台でその様子を見ていた万作さんの
あふれんばかりの笑みが印象的でした。
「いわゆる守破離ですね」なんて、
当事者でもない者が軽々しく口にすることを
はばかるような迫力のある舞台です。
これまで手にしたものを大事にしながらも、
いくつになっても新しい自分を
探しながら進化することで
その歳ならではの「時の花」を咲かせることが、
私たちもできると思います。
あなたはいま、
どのような「時の花」を咲かせているのでしょうか?