上司の大切な仕事の1つが、部下の業績評価です。
「業績評価シート」のような所定のフォームで、
複数項目について「5点満点の4」などの
点数をつけ、上司コメントを記入する、
このような方式が一般的かと思います。
部下の昇給や昇格、ボーナス金額に影響するため、
私も、一人一人の顔を思い浮かべながら、
時間をかけて慎重に記入した覚えがあります。
全員に5をつけたい気持ちにもなりますが、
そうもいかず、公正につけるしかありません。
そのために、私が注意していたことがあります。
評価者に起きやすい「心理的な罠」に
陥らないように気をつけるということです。
この「心理的な罠」にはいくつかあるのですが、
特に注意していたのは、「対比バイアス」です。
たとえば、自分が企画が得意だったとします。
そうすると、
高い水準の自分の企画力を基準として
部下を評価してしまうのです。
それなりの企画力がある部下でも、
高い自分の水準ら見て「まだまだだ」と思えて、
3点をつけてしまう、
こういうことが起きるのです。
逆に、同じ部下が、
別の企画力の弱い上司の下にいたとしたら、
「こいつはすごい」と思われて、
5点をつけてもらえることが可能性としてはあります。
評価結果は、会社全体で一元的に管理されるため、
いくら上司の主観が入るとはいえ、
この時点で、既に公正な評価とはなっていません。
そのようなバイアスを避けるために、
さらに上位の役職の人の評価をかぶせたり、
あるいは、
合議制をとったりする会社もあるようですが、
何より1次評価者である直属の上司の時点で
できうる限りの公正さが保たれている必要があります。
もちろん、自分の強みを基準として、
部下の育成を図ることは悪いことではありません。
「あの人の下にいると、企画力が鍛えられる」
何てことはよくあることですから。
上司も、自分が得意なことを
部下に伝えることが1つの役割でもあります。
しかし、こと「評価」に関しては、
部下の将来に影響するため、
よくよく、この「対比バイアス」があることを
わかった上で、慎重に行う必要があります。
そのためには、
上司が自分の強みと弱みをしっかりと自覚し、
さらに、それらが平均水準と比べて
どれぐらいの位置にあるのかを、
知っておくことが大切です。
正しい「自己理解」は、
このような局面でも威力を発揮します。