「小善は大悪に似たり」~小善と大善の判断基準

■良き生き方とは

 

「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」
という言葉があります。

 

京セラの名誉会長・稲盛和夫さんが
よく使われる言葉です。

 

目先の小さな「善」は、
大きな観点から見れば実は悪であることが多く、
本当の「善」は、冷たくて非情だとさえ思われる
ようなものである、

ということですが、
ビジネスに限らず、教育や子育てなど、
あらゆる人の営みに共通しています。

 

よかれと思って
部下に対して懇切丁寧な指導をしすぎると(小善)、
部下は依存心が大きくなり
自律できない社員になってしまう(大悪)

というような例は、
いくつも思い浮かぶのではないでしょうか。

 

でも、なぜ、
わざわざこのような言葉があるのかというと、
「小善」を望み、それをもてはやすような人たちが
少なくないからです。

 

懇切丁寧な指導をする上司は「優しくていい人」、
自律を求めて突き放すような上司は「厳しくて冷たい人」、

目先の利益をちらつかせる政策を行うのは「いい政治家」
正直に痛みの伴う政策に理解を求めようとするのは「悪い政治家」

こちらも、数え上げればきりがありません。

 

結局、「小善」を望む人がいるから「小善」がまかり通るわけです。

 

「そんなものは実は大悪だ!」と喝破して、
厳しくはあっても「大善」を支持するだけの力を
私たちは持ちたいものです。

 

では、「小善」と「大善」の判断基準を
どこに置けばよいのでしょうか?

 

インド独立の父・マハトマ・ガンディーの言葉を
参考にしてみます。

 

ガンディーは、
非暴力不服従運動のさなかの1925年10月22日、
“ヤング・インディア(Young India)”という雑誌にて
この世にあってはならない「7つの社会的な罪」
について述べています。

 

すなわち、

 1.理念なき政治

 2.労働なき富

 3.良心なき喜び

 4.人格なき学識

 5.道徳なき商業

 6.人間性なき科学

 7.献身なき信仰

 

あらためて、
ひとつひとつの言葉をかみしめてみると、
自分自身に対しても、社会全般に対しても
思い当たることがたくさんあります。

このような罪は、行う側だけでなく、
これらを要求したり、もてはやしたりする側も同罪です。

90年以上の時を経ても、全く色あせない、
それどころか、今まさにこれらのことが
問われているのではないかとさえ思えるような、
ガンディーの慧眼です。

 

このガンディーの「7つの社会的な罪」を、
「小善」か「大善」かの基準とすることができます。

 

すなわち、目先の「いいね」を得ることではなく、
一見厳しく見えるために
ときには反発を受けるかもしれないが、
最終的には社会に利益をもたらす「大善」とは
次のようなことではないでしょうか。

 

1.理念ある政治

人気取りや政党のアピール合戦のための
耳に心地よい政策ではなく、
痛みを伴うかもしれないが
現実を直視して、最終的な国民の幸福を考えた政治

 

2.健全な労働による富

「楽して儲けるためのノウハウ教えます」という
サービス提供者とそれに群がる人たちをよそ目に、
当たり前のように努力を前提とした、
しかしそれを喜びとしてなしえる仕事

 

3.良心のある喜び

「自由に生きる」との錦の御旗のもとに、
大切なものや周りの人を犠牲にするかもしれない
独りよがりの喜びではなく、
道義心と誠実さの中で生まれたより深い喜び

 

4.人格ある学識

知識をひけらかすことや、ウケを狙った言動を売りにして
ステータスと優越感を得ようとする品格に欠ける知識人と、
その尻馬に乗る人たちではなく、
たとえ地味でも、筋の通った理念と倫理観の伴う学識

 

5.道徳のあるビジネス

たとえ成功したビジネスモデルが脚光を浴びても、
「本当にこれで人が人らしく生きていく幸せな世の中になるの?」
との問いを自らに発し続ける姿勢を持った経営・ビジネス

 

6.人間性ある科学

便利だから、新しいから、速いからではなく、
「科学の善悪を決めるのはそれを使う人間である」
ということを肝に銘じて行う
人や環境、地球上のあらゆるものを大切にした
テクノロジーの活用

 

7.献身的な信仰

見返りを前提とせずに、
「利他の心そのものが自分自身の喜びである」と
感じるような信仰・信念・貢献。

 

 

安易に「小善」を提供したり求めたりするのではなく、
「大善」が何かを見極めて、
それを提供し、支持することができる見識を
持ちたいと思っています。

 

 

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