2015/10/27のコラム、
『方法論を学ぶときに気をつけること』で
「判断センサー」と「学習センサー」について紹介しました。
たとえば、講演やセミナーで話を聞くときに、
「使えるか使えないか」といった
判断視点(判断センサー)で臨むのか、
「どうしたら使えるのか、何が学べるのか」といった
学習視点(学習センサー)で臨むのか。
判断センサーも必要ではあるが、
より多くの価値ある情報を手にするためには、
学習センサーでものを見る習慣を持つとよい。
「これは使えないわ」と思ったときこそ、
学習センサーのスイッチをオンにする絶好の機会である。
超ざっくり言うと、このような内容です。
今回は、その続編ですが、
人が持つセンサーには別の切り口があります。
「やり方センサー」と「あり方センサー」です。
「どのようにすればうまくいくのか」といった方法論、
つまり「やり方」を学ぼうとするのが「やり方センサー」です。
懇切丁寧に教えてもらうことを期待しようが、
自分で勝手に学習するからいいもんね、と思おうが
まあ、その点についてはどちらでもよく、
how to の視点で情報を取り込もうとします。
もちろん、学習&成長のプロセスには
なくてはならないセンサーです。
しかし、人の成長に大きな影響を与えるのは
やり方を学んだときではなく、
あり方を学んだときではないでしょうか。
仕事に向き合う姿勢です。
ラグビーのワールドカップで
一躍時の人となった五郎丸歩選手が、
著書の中でこんなことを言っています。
要約してお伝えします。
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自分のキッカーとしての転機は大学のときに訪れた。
イングランドをワールドカップ優勝に導いた
世界一のゴール・キッカー
ジョニー・ウィルキンソンの指導を受けたときのこと。
強く印象に残っているのは、技術的な指導よりも
ラグビーに取り組む彼の姿勢。
学生相手のクリニックが始まる1時間以上前から、
グラウンドに出て、たった1人で
黙々とキックの練習をしているのを目撃した。
蹴られたボールは、
同じポストの同じ高さの位置に命中し続けていた。
誰が見ているわけでもなく、
外してもどうなるわけでもないのに、
全ての動作に集中して、1時間ひたすら蹴り続ける。
自分は、このような
世界最高のキッカーの姿勢に心を打たれた。
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まさに「あり方センサー」が働いています。
五郎丸選手だけではなく、
もちろん私たちも「あり方センサー」はあります。
『プロフェッショナル』や『情熱大陸』などの番組を見て
感動を覚えるのは、
登場人物のやり方を学んだからではなく、
彼らのあり方に心が動かされるからです。
志を語ることを止めずに、
先頭に立って困難に向かっていった姿勢が
従業員の共感を呼んだのか!
あの人の地道な努力をひたすら続ける姿勢が
いまの成功につながったのだ!
この人でさえ、人から学ぼうとする
謙虚な姿勢をいまでも持ち続けているのか!
あり方への共感です。
番組に登場するような人たちでなく、
例え身近な人であっても、
その人からは、仕事のやり方だけではなく
あり方も学べるかもしれません。
「判断センサー」と「学習センサー」だけでなく、
「やり方センサー」と「あり方センサー」も加えてものを見ると、
受信力は一段と上がります。
参考文献)『不動の魂 桜の15番 ラグビーと歩む』
五郎丸歩著, 大友信彦編, 実業之日本社, 2014