櫻田毅オフィシャルブログ

40年前の造船工場実習から、いま気づいたこと

2014年10月21日

 

今回は、学生時代の話です。

当時、工学部の「造船学科」というところで学んでいました。

 

名前のまんまの造船マン育成学科で、
卒業生の多くが造船会社に就職しています。

 

現在は今風の名前に変わっていて、
地球環境工学科船舶海洋システム工学コース・・・
だとか。

 

 

そこでは授業の一環として、
3年生の夏休みに3週間、
実際に造船所で働くといった工場実習がありました。

 

船の建造を、自分の身体で
見て聞いて体験してこい!つう訳です。

 

全国の造船所に数人ずつ分かれて行き、
現地で合流した他校の実習生と一緒に
汗だくになって働きます。

 

巨大な船が建造されていく様を目の当たりににしながら、
造船という仕事の醍醐味を経験した多くの実習生が、
「おーし、絶対に造船会社に就職するぞ!」との
決意を新たにしたものです。

 

受け入れ側の造船会社も、
忙しい中、プログラムに様々な工夫を凝らしくださり、
本当によく面倒を見てくれました。

 

 

 

ある日の朝、私たち実習生は、
長さが十数センチのペンライトのような形の
金属棒を1本ずつ渡されました。

 

指導員の方がこう言われました。
「これを、今日一日かけて指定された太さまで、
鉄ヤスリで削って仕上げてください」

 

まあ、万力に固定してそれなりに削ればすぐできるやん、
って楽勝ムードが漂った中、

「ただし、誤差±0.1ミリの範囲で太さが均一になるように」

 

記憶が不正確ですが、
確かこれぐらい、いやもっと厳密な精度だったような気も・・・

 

 

一同、「・・・・・」

 

 

 

作業場には目の粗さの違う各種のヤスリが
ずらっと並んでいて、
0.001ミリ単位で計測できる
マイクロメータという計測機器が置いてありました。

 

 

 

早速、金属棒の太さを測ると
指定寸法より数ミリ太い。

 

とりあえず万力に固定して、
適当なヤスリでゴシゴシと削り始めました。

 

時々マイクロメータで寸法を計測してはまた削り、
ってやっていたんですが、
1時間も過ぎたところでわかってきました。

 

卒倒しそうになるぐらい難しい。

 

 

どんなに慎重に削ってもムラができるし、
太さを均一にしようとしてあちこち削っていると、

あっ!削りすぎてしもうた・・・

 

指定寸法を小さく修正してもらって、またゴシゴシ・・・

 

汗をぼたぼたとこぼしながら、
審査で何度もダメだしをくらいながら、
必死で集中力を維持しながら、

夕方まで延々と続けました。

 

 

IMG_1397a

 

 

少しずつ削り方のコツや、
ヤスリの目の使い分けなどが身体でわかってきて、
最終的には全員がなんとか合格しました。

 

もう、疲労困ぱい、体力限界、精神へなへな、
つまり、へっとへとです。

 

最後に指導員の方が、
「とにかくやったということが大事です。
以上、はいっ、お疲れさまっ。」

 

 

 

寮に帰って晩ご飯食べながら
「今日のは何だったんだろうね」と
皆で話題にしたんですが、何だかよくわからない。

 

モノ作りの厳しさ?

手作業という原点の経験?

やりきる経験?

 

イマイチ、ピンとこないまま、
翌日から別の実習が始まりました。

 

 

しかし、私はこの体験を
40年近く、ず~~~っと忘れずに覚えていたんですね。

 

それ以外の実習の内容は、
ほっとんど忘れてしまったにもかかわらずですよ。

 

んで、数日前、
またこのことを思い出したとき、
突然こう思ったんです。

 

もしかしたらあの指導員の方は、
「相手に学んで欲しいことと、本人が学ぶことは違う」
ということを知っていたのではないか。

 

 

彼が実際にどう思っていたかはこの際どうでも良く、
大事なことは、
「相手に学んで欲しいことと、本人が学ぶことは違う」
ということを、
私がいま、あらためて気づいたということです。

 

40年近く前の経験から、いま、何かに気づくって、
ちょっとぞくぞくしました。

 

 

部下や生徒や子どもの教育でも、
そうなんですよね。

 

いくらこちらに、
「この経験から、このことを学んで欲しい」
という思いがあっても、
実際に学ぶのは、部下であり、生徒であり、子どもなんです。

 

教育や育成というのは、学ぶ環境を用意して、
気付きのための呼び水を提供することは必要ですが、
何を学ぶかは本人に委ねる。

 

この考えを根底に持っていた方が
双方にとっていいのではないか。

 

 

期待したことを学んでくれなくても、
落胆もしないし腹も立たないし、
学ぶ方も、何のバイアスもなしに学ぶことで、
学ぶ力や考える力がつくでしょうから。

 

そうすると、上司は部下に対して、
「この経験から、目的意識の重要性を学んで欲しい」とか

「やりきるって素晴らしいだろ」とか

「今回は、お客様のありがたさを学んだよな」なんて、

余計なことを言わずに、
ただ、「何を学んだの?」と聞くだけでいいのではないでしょうか。

 

 

 

と、ここまで書いたところで、
吹奏楽の超×3の名門校・大阪府立淀川工科高校(ヨドコウ)の
顧問であり、生徒育成に定評のある
丸谷明夫先生のインタビューをやっぱり突然、思い出しました。

 

「吹奏楽を通じて、生徒たちに何を学んで欲しいですか?」
という質問に対して
「そんなもん生徒に聞いてくれ。何を学ぶかはあいつらの勝手や」

 

うん、やっぱりそうなんだ。

 


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